
忘年会や新年会、または結婚式などでスピーチや乾杯の挨拶をしている人を見ていると「僭越ながら…」という言葉から喋り始める方が多いように感じます。
この「僭越ながら」という言葉にはどのような意味があるのでしょうか。
今回はスピーチや人前に出て挨拶をする時によく耳にする「僭越ながら」という言葉に注目してみました。
目次
「僭越ながら」の意味とは?
「僭越ながら」が持つ意味としては「出すぎたマネをしますが…」というものになります。
つまり「自分は人前で挨拶をするほどの立場ではない事は分かっていますが、差し出がましいのを承知で挨拶をさせて頂きます」といった、へりくだった意味合いを持っているのです。
この意味合いは、漢字からも読み取る事が出来ます。
「僭越ながら」の「僭」はおごる、「越」はこえるという意味を持っていることから「本来の身分を奢り超える事をしますが…」という表現である事が分かるのです。
その為、この言葉を発する人は一様にどこか申し訳なさそうな表情をしています。
もし自信満々に「僭越ながら!」と言う人がいたら、その人は言葉の意味を知らずに使っているのかもしれません…。
「僭越ながら」の類語
「僭越ながら」の言葉には多くの言い換え表現があります。
例をご紹介すると「生意気ですが」や「図々しいようですが」「不躾ではありますが」等々。
他にも「厚顔ながら」という表現もあるそうです。
「厚顔ながら」はあまり聞きなれない言葉ですが、厚顔無恥という四字熟語があるようにこの言葉は「面の皮が厚くて恥を知らない」という意味を持っています。
よって「恥を知らない≒出すぎたマネをする」という意味合いで「僭越ながら」の言い換えとして使われる事もあるようです。
ちなみに「不躾ではありますが」には、読んで字のごとく「躾がなっていませんが」という意味があり、こちらも「躾がなっていない≒出すぎたマネをする」という意味での言い換えに使われるそうです。
なお「不躾ですが」は「僭越ながら」と同じく結婚式や忘年会などの飲み会などで頻繁に使われるので、覚えておいて損はないでしょう。
「僭越ながら」の正しい使い方とシーン別の例文
最初に「僭越ながらは結婚式や忘年会や新年会などでよく耳にする」とお伝えしました。
しかし、会社の忘年会や新年会で「僭越ながら…」はよく聞くものの、友人だけでの忘年会や新年会で「僭越ながら…」と言う人は殆どいません。
では「僭越ながら」はどのように使うのが正しいのでしょうか。
調べてみたところ「僭越ながら」は、目上の人がいる場面で使われるのが一般的なのだそうです。
つまり、結婚式で「僭越ながら」と言うのは「自分以外にも挨拶をするのに相応しい方(目上の人)がいるとは思いますが…」という意味合いを持ち、会社の忘年会や新年会では「上司を差し置いて自分が挨拶するという出しゃばったマネをしますが…」という意味合いを持つという事。
「僭越ながら」はへりくだった表現なので、目上の人がいる場面や会社の取引先に対して使うのが正しい使い方なのです。
仲間内での飲み会の挨拶で「僭越ながら」という言葉が聞かれないのは、気を遣う(へりくだる)必要が無いからなのでしょう。
「僭越ながら」という表現は、仲間内では殆ど使わないものの社会人として知っていて損はありません。
ぜひ覚えておきましょう。
では具体的にどのように「僭越ながら」を使えば良いのでしょうか。
これからは場面別に簡単な例文をご紹介したいと思います。
結婚式や会社の飲み会で乾杯の音頭やスピーチを任された場合
この場合は、
「僭越ではございますが、乾杯の挨拶(スピーチ)をさせて頂きます」
「ご指名を頂きましたので、僭越ながら私○○が乾杯の音頭を取らせて頂きます」
「僭越ではありますが、乾杯の挨拶を務めさせて頂きます。どうぞご唱和ください」
といった表現があります。
ちなみに、非常に改まった場面では「僭越ながら」や「僭越ではございますが」よりも丁寧な「はなはだ僭越には存じますが」という表現もあるそうです。
手紙やビジネスメールで「僭越ながら」を使う場合
「僭越ながら」という表現は口頭表現ではありません。
よって取引先とのビジネスメールで「僭越ながら」という表現を使う場面もあります。
その場合の例文としては「僭越ながら私の意見を申し上げます」や「僭越ではございますが、この度のご提案につきましては見送らせて頂きたく存じます」「僭越ながら式典に参加させて頂きます」等々。
ビジネスメールになると「僭越ながら」は「恐縮ですが」という表現に近い使われ方をするようです。
「僭越ながら」の英語表現
「僭越ながら」という表現を調べていく中で、私の中にふと「英語では何て言うんだろう」という疑問が芽生えてきました。
国際化が進んでいる現代において、もしかすると英語でのスピーチや挨拶が求められる事があるかもしれません。
その時に少しでも役に立てればと思い僭越ながら(笑)、英語表現についても調べてみました。
調べた結果「僭越ながら」にぴったりの表現は残念ながら見つけられなかったのですが、近しい表現は2つほどありました。
それが
I don’t meant to be rude
「I don’t meant to be rude」と「With all due respect」
「I don’t meant to be rude」には「失礼なことを言うつもりはないのですが」という意味があり、「With all due respect」には「恐れながら」「失礼ですが」という意味があります。
意味だけを見ると「With all due respect」は「僭越ながら」に近い表現であるように感じますが、この言葉は「お言葉ですが」というように相手に反論する時によく使われる表現だそうです。
日本語の「僭越ながら」のつもりで使ってしまうと、場面によっては相手が混乱してしまう可能性があるので、「With all due respect」を使う場合には場面に注意して使ってください。
ちなみに「I don’t meant to be rude」は何かを人に頼む時に、謙虚な姿勢を示すために前置き表現として使われる事が多いのだとか。
よってこの表現は自分が何かをする時ではなく、人に何かをしてほしい時に使う表現である事を覚えておくと良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
結婚式や会社の飲み会などでよく耳にする「僭越ながら」という表現は「出すぎたマネをしますが」という、へりくだった表現であることがお分かりいただけたと思います。
会社の上司がいる場面や取引先とのやり取りで使える表現になるので、ぜひ覚えておいてください。
なお同じ会社の人がいる場面でも部下や同僚の前で「僭越ながら…」と使ってしまうと、聞く人によっては嫌味に聞こえてしまう可能性があるので、表現だけでなく意味もしっかり覚えておきましょう。
ビジネスの場面では特に、表現一つで印象が大きく変わる事が多々あります。
その印象が今後の取引や業務に関わる事も少なくありません。
今回の記事が社会人の皆さんやこれから社会人になる方々にとって少しでも役に立てれば嬉しいです。